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Apple Musicの利用を開始すると、「iCloudミュージックライブラリ」という聞き慣れない用語が表示されることがあります。

たとえば、「For You」に表示されたおすすめのプレイリストを「My Music」に追加しようとすると、上の画像のようなメッセージが表示されます。気に入った曲を保存するには、設定でオンにしなければならないわけです。

で、その指示に従い、「設定」アプリの「ミュージック」で、「iCloudミュージックライブラリ」をオンにすると……

iCloudミュージックライブラリ02b
……こんな表示が出て、ますます分からなくなります。いったい「結合」や「置き換え」とは何を意味しているのか?ここで「キャンセル」を選択すると、Apple Musicの「My Music(マイミュージック)」に曲やプレイリストを保存できませんので、サービスを存分に楽しめません。意味もよく分からないままオンにしている方も多いのではないでしょうか?

iCloudミュージックライブラリ03
さらに、驚かされるのが、iTunesでApple Musicを始めたときです。

iCloudミュージックライブラリ03a
「iCloudミュージックライブラリを使用しますか?」というメッセージに従い、使用を許可すると、いきなりiTunesライブラリ内の曲をアップロードし始めます。この曲がいったいどこへアップロードされているのかわからないまま、不安な気持ちでサービスを開始させられることになります。

そこで、いろいろと調べた結果、「iCloudミュージックライブラリ」がどのようなライブラリなのか自分なりに把握できましたので、ちょっとここで説明させて頂きたいと思います。間違っていたら、スミマセン。

※2015年7月20日、検証をもとに全体的に訂正しました。
※2015年7月14日、結合と置換について訂正しました。
※2015年7月8日、DRMについて補足しました。
※2015年7月7日、図の訂正と加筆を行いました。


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iCloudミュージックライブラリとは何か?

言葉で説明するより、図で見た方が分かりやすいと思います。

iCloudミュージックライブラリ05e
タップすると拡大します。この図が示すように、「iCloudミュージックライブラリ」とは、Apple IDを持っているユーザー個人のライブラリです。で、同じApple IDを設定している複数のデバイスからアクセスできるオンライン上のライブラリでもあります。

つまり、従来の「iCloud」そのもののイメージです。メールや連絡先、カレンダーなどの情報が自動的にアップロードされ、同じApple IDで関連づけられた各デバイスにプッシュされる——というのがiCloudでしたね。これらの情報と同じように、今回は「iTunesライブラリ」がiCloudの対象となります。で、音楽ライブラリがiCloud化されたものなので、「iCloudミュージックライブラリ」という名称になった、といえるのだと思います。

一方、そうしてアップロードされた個人の「iTunesライブラリ」は「iCloudミュージックライブラリ」化されるさい、Appleが用意した「Apple Musicライブラリ」内のカタログと照合されて整理され、かつカタログにある曲はDRMが付与されます(DRMについては後述)。これにより、個々の膨大なユーザーがアップロードしたデータそのものを扱う必要がなくなりますから、Apple Musicから各端末への曲のリストアップが早くなり、ストリーミングも快適になるわけです。

では、「iCloudミュージックライブラリ」にはどんなデータが保存されるのでしょうか?

図にも少し載せてありますが、だいたい次のような情報やコンテンツが保存されます。 
  1. Apple Musicから追加した曲、アルバム、プレイリスト
  2. iTunes Storeで購入した曲
  3. iTunesライブラリ(パソコン内の曲)
他にもあるかもしれませんが、「ミュージック関連の情報やコンテンツ」がオンライン上でクラウド化され、Apple IDで関連づけられたデバイスに同期されます。

また、Apple Musicを利用しているApple IDだけでも、「For Youの内容」「Connectでフォローしているアーティスト&コメント」「Radioで最近再生された曲」などはデバイス間で同期が可能です。

1番の情報およびコンテンツは、Apple Musicが登場して初めて出現した要素です。それまでiTunes上で個々のユーザーが手動で整理していたカタログは、すでに「Apple Musicライブラリ」内にありますので、ユーザーはたんに気に入った曲を「My Music」に保存するだけで済んでしまいます。プレイリストもAppleが用意してくれますし、個人が作ったものは共有機能によってSNSでシェアすることもできるようになりました。

2番の「iTunes Storeで購入した曲」は、「iTunes in the Cloud」という名称で提供されているサービスで、それがApple Musicと統合された形となります。iTunes Storeから一度購入した曲を、同じApple IDを設定したデバイスからダウンロードできたり、ストリーミング再生できる機能です。

3番の「iTunesライブラリ」は既に説明したように、個人的にリッピングしたCDなどが保存されたパソコン内の音楽データのことです。従来、「iTunes Match」によって提供されている機能と似ていて、iTunesライブラリ内の曲がAppleのカタログとマッチングされ、ALAC、WAV、AIFF フォーマットの曲は256kbps AACフォーマットに変換されてアップロードされます。これにより、様々なデバイスから手持ちの曲をストリーム再生したり、ダウンロードできるようになります。

Apple MusicとiTunes Matchとの違いについて

iTunes Matchは今もサービスを提供していますが、この機能がApple Musicでも利用できるようになったわけですが、大きな違いはDRM(デジタル著作権管理)が付与されるかどうかです。

iTunes Matchを利用してアップロードされた曲はカタログと照合されて変換されますが、DRMは付与されません。

一方、Apple Musicを利用してアップロードされた曲には、カタログと合致する曲に対してはDRMが付与され、合致しない曲に対してはDRMフリーとなります。結果、DRM付きになった曲に対しては、同一のApple IDを設定しているデバイスでしかストリーミング再生およびダウンロードはできず、もちろん外に書き出すこともできません。また、Apple Musicのサービスを解約すると、iCloudミュージックライブラリにアクセスできなくなります。そのため、iCloud上に曲がアップロードされているからといって、パソコン内の元データを削除すると、サービス解約後に曲が消えてしまうおそれがあるので注意が必要です。

どちらのサービスを利用しても、オリジナルのiTunesライブラリ内の曲データは元のままです。ですから、Apple Music利用者は、パソコン内の元データを消さないようにしましょう。 

なお、Apple Musicによって、パソコンから「iCloudミュージックライブラリ」にアップロードされた曲の取り扱いは、iTunes Matchの条件と同じになるそうです。

参考1:Apple Musicで利用するiCloudミュージックライブラリはDRMが自動的に付与される(楽しくiPhoneライフ!SBAPP)


冒頭の疑問に対する答え

というわけで、最初の疑問に戻りましょう。

「結合」や「置き換え」とは何を意味するのか?

iCloudミュージックライブラリ02a
iPhoneに音楽データが保存されている場合、ローカル(iPhone内)とクラウド(iCloud内)のライブラリをどのように同期するのか、についての選択肢といえます。

この選択肢が出たとき、すでにiPhone内にあるローカルの曲というのは、iTunes Storeからダウンロードした曲か、パソコンのiTunesから同期した曲になります。「結合」を選択した場合は、iPhoneローカルの曲情報を「iCloudミュージックライブラリ」追加することで、クラウドとローカルのライブラリ全体を統合し、別の端末に同期させます。通常は、こちらがおすすめです。

一方、「置き換え」を選択した場合は、現在の「iCloudミュージックライブラリ」の内容で、iPhoneのライブラリを置き換えます。クラウドにない曲は消えてしまいますが、あとからiTunesライブラリを「iCloudミュージックライブラリ」にアップロードすれば、自動的に同期されるので安心です。また、購入した曲も、iTunes Storeから再ダウンロードできます。

「結合」と「置き換え」については別記事で検証しましたので、詳しく知りたい方は参考にしてください。

 iCloudミュージックライブラリの「結合」と「置き換え」はいったい何が違うのか?

iTunesからアップロードされた曲の扱い

パソコンからiTunesライブラリがすべてアップロードされたあと、同じApple IDを設定しているiPhoneやiPadのライブラリはどのように変化するのでしょうか?

結論としては、iTunesライブラリがまるごと「My Music」タブの「ライブラリ」にリストアップされます。もちろん端末にダウンロードされるわけではなく、あくまで表示だけで、必要に応じてストリーミング再生したり、ダウンロードしたりできます。

また、必ずしもすべての曲がマッチングされるわけではなく、Appleのカタログにない曲はiTunes Matchと同じ条件で変換されてアップロードされます。現に、私の友人が自作した未公開の曲をiTunesライブラリに入れていたのですが、それもiCloudミュージックライブラリにアップロードされたのち、DRMフリーの曲として、iPhoneの「ミュージック」アプリにアルバムとして表示されました。そのような個人が自作した曲も、Apple Musicによってストリーミング再生が可能でした。

なお、iTunesからアップロードされ、カタログと照合された曲がどのように変化するのか検証しましたので、気になる方はこちらをご参考に(2015年7月16日作成)。 

【検証】iTunesから「iCloudミュージックライブラリ」にアップロードされた曲がどう変換されるのか確認してみた 

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※iTunesライブラリ(ローカル)に保存していたアルバムがiPhoneにも表示された。ただし、カタログと照合された曲にはDRMが付与される。

曲が多いと、アップロードとマッチング、各端末への同期に時間がかかると思いますが、iTunesライブラリがクラウド化された上、Apple Musicライブラリにカタログ情報が統合され、一様にどの端末にも表示されるのは、ちょっと驚きです。初めてiCloudを使ったときのことを思い出しました。

まとめ

「iCloudミュージックライブラリ」について、一通りまとめてみました。まだよくわかっていない部分もあるかとは思いますが、おおよそ概念としては、図で示したようなものになると思います。 

新しい用語に対して、何の説明もないのですから(どこかにあるのかもしれませんが)、多くの人が「???」になったと思います。

ポイントは、「iCloudの音楽版だ」ということです。iCloudは個人のデータを扱うサービスですから、「iCloudミュージックライブラリ」も個人的なものです。Apple Musicのファミリーメンバーシップに加入しても、共有されるのは支払いの情報とiTunes Storeの購入物だけで、「iCloudミュージックライブラリ」は各個人のものになります。個人の音楽ライブラリだから、iPhone、iPad、Macというような複数の端末にも同期できるわけですね。

なお、パソコン(iTunes)からアップロードされてカタログにマッチした曲にはDRMが付与されますので、無料トライアルメンバーシップ解約後のことを考えて、オリジナルデータは消さないようにしましょう!

関連:【検証】iTunesから「iCloudミュージックライブラリ」にアップロードされた曲がどう変換されるのか確認してみた

関連: iCloudミュージックライブラリの「結合」と「置き換え」はいったい何が違うのか?


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