AppleMusic検証21
Apple Musicの無料トライアルメンバーシップに参加して、まず驚かされるのがiTunesが突然、既存の音楽データをアップロードし始めることです。

すでにiTunes Matchを利用されていた方は見慣れた光景だったかもしれませんが、そうでない人にとってはウイルスで遠隔操作されているかのような不気味な光景です。

いったい、それまで自分が管理してきた曲はどうなってしまうのか、まったくわからないからです。

Appleのサポートページの説明によれば、MacまたはWindowsパソコンのiTunesからアップロードした曲の取り扱いについては、次のようなルールがあると言います。

アップロードした曲の Apple Music での取り扱い
  • 個人用のミュージックライブラリに最大 25,000 曲まで追加できます。iTunes Store から購入した曲の数は、この上限の計算時に除外されます。
  • 200 MB 以下または 2 時間未満の曲だけがアップロードされます。
  • ALAC、WAV、または AIFF フォーマットの曲は、ローカルで個別の 256 kbps AAC 一時ファイルにトランスコードされてから、アップロードされます。元のファイルは変更されません。
  • MP3 または AAC フォーマットの曲は、一定の品質基準を満たしていない限り、カタログとの照合もアップロードもされません。 
  • デジタル著作権管理 (DRM) で保護されている曲は、お使いの Mac または Windows パソコンが曲を再生できるよう認証されている場合を除き、カタログとの照合もアップロードもされません。
  • iTunes でアップロードした曲は、オフラインで聴けるように保存していない限り、お使いのデバイス上のスペースを占有しません。
と、これに目を通しても、よくわからないと思いますので、この記事では単純に「iTunesからアップロードされた曲がどのように変化するのか?」という問題だけに絞り、楽曲データのタイプ別に1つずつ検証することにしました。

「高音質の曲がアップロードで劣化したら嫌だな」とか「DRMが付与されるって本当?」という疑問にも答える形となっています。

なお、結論だけ知りたい方は、画面をスクロールして、一番下の「まとめ」をご覧ください。

iOS 8.4、iTunes 12.2.1で検証しました。個人的に検証したものなので、参考程度にご覧ください。見落としがある場合は記事を訂正し、この欄に更新情報を掲載します。

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iTunesからアップロードされる楽曲データのタイプ

iTunesに保存されている楽曲データは、大きく4つに分類できます。他にもあるかもしれませんが、たいていこんな感じだと思います。
  1. CDから取り込んだ曲(高音質)……Appleロスレスなど、DRMフリー
  2. CDから取り込んだ曲(低音質)……MP3など、DRMフリー
  3. iTunesStoreから購入した曲(iTunes Plus)……高音質、DRMフリー
  4. iTunesStoreから購入した曲(非iTunes Plus)……低音質、DRM付き
「CDから取り込んだ曲」は各自で設定をしていると思いますが、この記事ではざっくり高音質(Appleロスレス)と低音質(128kbps、MP3)に分けました。

また、「iTunes Storeから購入した曲」はiTunes Plusとそうでないものに分かれます。簡単にいうと、iTunes PlusはDRMフリーで高音質(256kbps、AAC)、そうでないものはDRM付きで低音質(128kbps、AAC)のものです。違いに気づかない人も多いと思いますが、非iTunes Plusは昔買ったシングル曲に多いですね。

で、これらの楽曲データは「iCloudミュージックライブラリ」にアップロードされることで、Appleのカタログと「マッチング」が行われます。マッチングされたかどうかによっても、楽曲データには変化が起こります。ですので、この記事では「マッチングのあり・なし」についても触れていきます。

検証方法について

これは単純です。共通して、以下のような環境と手順で行いました。

用意したもの
  • ライブラリに何も入っていないiTunes
  • ライブラリに何も入っていないiPhone
  • ライブラリに何も入っていないApple ID
ライブラリ=マイミュージック(My Music)=iCloudミュージックライブラリ

CDから取り込んだ曲の検証手順
  1. iTunesでApple MusicにサインインしてCDをインポートする
  2. iCloudミュージックライブラリに曲をアップロード&マッチング
  3. iTunesでオリジナルのファイル情報をチェック
  4. iPhoneでApple MusicにサインインしてMy Musicを同期
  5. iTunesからオリジナルの楽曲データを消去する
  6. iTunesにiCloudから同じ曲を再ダウンロード
  7. 3番とファイル情報に変化があったかどうかを比較する
CDを取り込む場合は、ライブラリが空のiTunes、iPhone、Apple IDで行いました。そのほうがアップロードに時間もかかりませんし、確認もしやすいからです。また、iPhoneが必要なのはiCloudの同期を確認するためと、別の端末でアートワークがどう変化するのかを確認するためです。

iTunes Storeから購入した曲の検証手順
この場合は、iTunes Storeで曲を買っているApple IDとiTunesを利用しました。既にiTunesには曲がダウンロードされている状態で、Apple Musicを開始すると、曲のマッチングが行われます。で、その時点で「iCloudミュージックライブラリ」に購入した曲がアップロード&マッチングされた状態ですので、そこから以下の手順で検証しました。
  1. iTunesでダウンロード済みの曲のファイル情報を確認
  2. iPhoneでそれが同期されているかを確認
  3. iTunesからダウンロード済みの曲を削除する
  4. iTunesにiCloudから同じ曲を再ダウンロード
  5. 1番とファイル情報に変化があったかどうかを比較
注意点は、iTunesに「ダウンロード」されている曲だけを削除する点です。曲そのものを削除してしまうと、iTunes Storeの購入履歴から再ダウンロードしても元に戻らないことがあります。私の場合、4年ぐらい前に買ったアルバムが「不明なアルバム」として処理されてしまいました。

【検証1】CDから取り込んだ高音質の曲はどう変化するのか?

以下、Appleロスレスエンコードで新規に取り込んだ曲が、カタログとマッチングされた場合、どう変化するのかを確認しました。

1.iTunesにCDをインポートする

AppleMusic検証01
Apple Musicに参加したばかりのApple IDでサインインし、曲をインポートします。ここではアートワークに、iPhoneで撮影した写真を手動で設定しました。

2.曲がアップロード&マッチングされる

AppleMusic検証03
自動的に曲やアートワークが「iCloudミュージックライブラリ」にアップロードされます。

3.オリジナルの楽曲データを確認する

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リッピングした曲を右クリックして、Windowsの場合は「プロパティ」を、Macの場合は「情報」を選択し、「ファイル」の欄をチェックします。ここでチェックするのは以下の項目。
  • 種類……ファイルフォーマットを確認します
  • ビットレート……音質を確認します
  • iCloudの状況……「Apple Music」=マッチ、「アップロード済み」=マッチなし、「購入した項目」=iTunes Storeの購入物、「不適格」=アップロードされていない
  • 場所……楽曲データの保存場所
このCDの場合は、Apple Musicとマッチされたことがわかります。

4.iPhoneでマイミュージックをチェックする

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iPhoneでApple Musicにサインインして「My Music」を開くと、先ほどアップロードしたアルバムが表示されました。「Apple Musicライブラリ」のカタログとマッチングされても、ユーザーが設定したアートワークが優先されるようです。曲もオンライン再生&ダウンロードが可能です。

5.iTunesからオリジナルの楽曲データを消去する

現状、iCloud上にある曲とiTunes上にある曲が、まったく同じものなのかは不明です。そこで、iTunesに保存した曲を削除し、iCloudから再ダウンロードをして両者を比較します。もし、自分でも試してみたいという方は、削除前に必ずオリジナルデータのバックアップを取ってください。

AppleMusic検証06
曲を右クリックして「ダウンロードしたものを削除」を選択します。これにより、パソコン内に保存してあるオリジナルデータが削除され、その代わりにiCloudから同じ曲をダウンロードできるようになります。オリジナルが消えるので要注意です。

その上の「削除」は曲の登録そのものを「My Music」から削除することになるため、クリックしないでください。パソコン内からもiCloudからも曲が消えてしまいます。もちろん「Apple Musicライブラリ」にある数百万曲はストリーミング再生が可能ですが、サービスを契約している間だけです。

6.iTunesにiCloudから同じ曲を再ダウンロード

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「ダウンロードを削除」を選択した曲には雲のマークが付きます。これはiCloud上に曲が存在しているという証拠です。クリックするとダウンロードできます。

7.楽曲データに変化があったかどうかを比較する

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手順1と同じように、曲の「プロパティ」または「情報」をチェックします。赤色で線を引いた部分が変化しています。AppleロスレスがAACに、ビットレートが997kbpsから256kbpsに、保存場所が自動作成されたフォルダ「Apple Music」に変わっています。「FairPlayのバージョン 2」とあるのは、デジタル著作権管理(DRM)が付与されたことを示します。

以上、CDから取り込んだ高音質の曲は、アップロード&マッチングされることにより、「AACに変換され、音質が下がり、DRMが付与され、保存場所が変わる」ことがわかりました。

マッチングされない高音質のCDはどうなる?

CDから取り込んだ高音質の曲で、カタログとマッチングされない曲を上記と同じ手順で検証した結果、次のように楽曲データが変化しました。

iTunesオリジナルの楽曲データ
AppleMusic検証09
Appleロスレス、856kbpsの高音質データ、マッチングなし、DRMなしです。

iCloudから再ダウンロードした楽曲データ
AppleMusic検証10
AAC、256kbpsに変換されました。ただし、DRMはなく、保存場所も同じです。

以上、CDから取り込んだ高音質の曲で、マッチングされていない曲は、「音質が下がる」ことがわかりました。

【検証2】CDから取り込んだ低音質の曲はどう変化するのか?

これも【検証1】とまったく同じ手順ですので、省略して結果だけを紹介します。以下、128kbpsのMP3ファイルがカタログとマッチングされた場合、どのように変化するのかチェックしました。

iTunesオリジナルの楽曲データ
AppleMusic検証11
MP3、128kbpsの標準音質、マッチングあり、DRMはなし。

iCloudから再ダウンロードした楽曲データ
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マッチングされたことで、AAC、256kbpsに変換され、DRMが付与され、保存場所が「Apple Music」フォルダに変わりました。

以上、CDから取り込んだ低音質(256kbps以下)の曲で、マッチングされた曲は、「AACに変換され、音質が上がり、DRMが付与され、保存場所が変わる」ことがわかりました。

マッチングされない低音質のCDはどうなる?

CDから取り込んだ低音質(MP3、128kbps)の曲で、カタログとマッチングされない曲を同じ手順で検証した結果、楽曲データはまったく変化しませんでした

AppleMusic検証14
低音質の楽曲データで、マッチングされない場合は、消去して再ダウンロードしても同じ物が落ちてくる、ということです。ただし、ある日突然カタログと合致した場合は、その限りではありません。

【検証3】iTunes Storeから購入した曲はどう変化するのか?

iTunes Storeで購入した楽曲は、それがiTunes Plus(DRMなし)であろうとなかろうと、マッチングされようとされまいと、再ダウンロードによる変化は一切ありませんでした。ファイルフォーマットも音質も保存される場所もDRMの有無も変わりません。DRMが付いているものは、付いたままです。

AppleMusic検証16
購入した曲に関しては、Apple IDに購入履歴が残っているため、そのIDを使っている限り、これまでと同じように利用できる、ということです。

まとめ:iTunesのオリジナルデータを消してはならない

これまでの検証結果を表にまとめました。

AppleMusic検証表
これを見ると、CDから取り込んだ曲でマッチングされたものにはDRMが付き、音質が256kbpsでないものは一律に256kbpsのAACに変換されることがわかります。その一方、iTunes Storeで購入した曲は一切変化しないこともわかりました。

他のフォーマットは未検証ですので何ともいえませんが、高音質でマッチングOKの曲はガラリと変わってしまうので注意が必要です。

今回、検証のためにiTunesから「ダウンロードしたものを削除」と選択して、ローカルの曲データを消し、iCloudから同じ曲を再ダウンロードするという手順を踏みましたが、オリジナルの曲を残しておきたい方は、けっして真似をしないでください

AppleMusic検証18
Appleのカタログとマッチした曲は、高音質であれ低音質であれ、その操作によってDRMが付与されたものが「Apple Music」という別フォルダに保存されます。保存場所が変わって、わけがわからなくなるのと、DRMが付いているため、同じApple IDで関連づけられたデバイスにしか表示されません。何より、その操作によってiTunesにあったオリジナルデータがiCloudのデータに置き換わってしまうことです。その場合はもう一度、CDからリッピングし直すしかありません。

AppleMusic検証17
また、冒頭でも触れましたが、iTunes Storeの曲は再ダウンロードしてもOKと思って削除しまくると、うまく再ダウンロードできない曲が出てきたりもします。こちらは「さだまさしベスト2」というお気に入りのアルバムだったのですが、iCloudから再ダウンロードしたら、「不明なアルバム」と表示され、13曲あったのが3曲に減り、さらに曲名が表示されなくなりました。CDならリッピングし直せばいいですが、購入したデータはどうすればいいんでしょう?さだまさしなら激怒しかねない事態です。

※追記:さだまさし、復活しました。こちらの記事もご参考に。 → Apple Music解約後にiTunesの楽曲データが消えてしまわないための知識と対処法

とにかく、iCloudにあるからといってデータは同じではありません。オリジナルデータは、どんなことがあっても消さないようにしましょう!


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